リウマチ治療

骨と関節とリウマチの話

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こつ・かんせつ・
リウマチセンター長
藤川 陽祐
専門分野 整形外科 リウマチ関節外科 骨代謝
資格等 ・日本整形外科学会専門医
・日本リウマチ学会指導医
・日本リウマチ財団登録医
経歴 大分大学医学部整形外科学講座准教授・付属病院臨床教授を経て、平成21年7月1日より当院こつ・かんせつ・リウマチセンター長に就任
骨と関節とリウマチの話

人の骨は生きており、毎年全体の約20~30%が吸収され同じ量の骨が作られていきます。骨を吸収する細胞のことを破骨細胞(はこつさいぼう)、骨を作る細胞のことを骨芽細胞(こつがさいぼう)と呼びます。破骨細胞が古い骨を吸収し、そこに骨芽細胞が新しい骨を作ることによって我々の骨は強度を保つようになっています。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、何らかの原因でこのバランスが崩れ、骨の吸収が亢進(こうしん)するか骨の形成が低下して全体の骨の量が少なくなっていった病態と考えられます。骨粗鬆症の治療では骨の量が減少した原因や現在の生活状態に応じた治療の選択が重要です。
また、骨の減少そのものを改善することが難しい場合には、薬物のみを服用するのではなく、転倒予防のために運動器の機能改善を考える必要があります。生きている骨の仕組みを理解して病態に合った治療と運動器全体の機能を考えて生活指導をすることで、寝たきりになるような骨粗鬆症による骨折を予防していくことが当センターの1つ目の目的です。

変形性関節症とは、軟骨の変性により関節の動きが悪くなったり関節を動かす時に疼痛(とうつう)を伴ったりする病気の総称です。体重を支え移動のたびに使用する膝関節に起こることが最も多く、中高齢者の膝関節痛の原因として最も多いものです。現在のところ変性した軟骨組織を再生する有効な方法は見出されていません。変性の進行を抑制することや症状の緩和のためにヒアルロン酸の関節内注入や膝周囲の筋力トレーニングが主な治療法となります。いよいよ関節の痛みが強くなれば人工関節を用いた関節再建術が有効です。現在では全国で約5万人の方が受けている手術です。当院でもこれまで多くの方がこの手術を受けていますが、センター開設に合わせて両膝の悪い方へ両膝同時の置換術(ちかんじゅつ)を行えるようにしました。術前の検査や手術に対する不安を解消して安心して手術を受けられるようにするのが当センターの2つ目の目的です。

当センターの3つ目の目的は、関節リウマチの最新の治療を行うことです。関節リウマチに対する治療法はこの10年で大きく変化しました。以前は有効な治療薬もなく関節の痛みと変形にただ耐えるしかなかった状態から、現在では関節の痛みを取るだけでなく、早めに診断をつけ関節が破壊されないように積極的に治療をしていくことができるようになりました。それは関節リウマチに対する新しい薬剤が次々と開発されてきたことや早期診断が可能になる検査法ができたことによります。特に生物学的製剤と呼ばれる薬剤の登場により早期に使用すれば関節の破壊を抑制することが可能になりました。しかし、このような治療は関節が破壊される前に始めなければなりません。関節の破壊はレントゲン写真に現れる前から始まりますので、関節に腫れが続く場合は早めに専門医に相談して下さい。
生物学的製剤を使用するには2つの点が問題となります。第1は、副作用に対する注意が必要なことです。注意すべきことをよく知った上で使用し、副作用が起きていないか注意深く観察してくことが必要です。特に特殊な肺炎をはじめとした呼吸器の副作用が問題です。このため当センターでは呼吸器内科の専門医と連携し、迅速な対応ができる体制を整えています。もう1つの問題は、この製剤の薬価が高いため、医療費が高額になってしまうことです。しかし、関節リウマチの患者さんは社会的に中心となって働いている方が多いのも事実です。症状の進行で家事や仕事ができくなることを考えると、障害をきたす前の早い段階で強力な治療をした方が良いと思われます。私が医師になった昭和60年代、関節リウマチの患者さんのほとんどは有効な薬物治療を行うこともできず全身の関節の変形で寝たきりとなっていましたが、現在では早めに診断をつけ関節が破壊される前に積極的な治療を行うことで関節機能の温存ができるような時代になりました。
これまで長くリウマチを患ってすでに関節の変形や破壊が進んでいる患者さんにも朗報が2つあります。それは生物学的製剤を使うことで変形していない関節を守ることができるようになったことと、すでに変形や痛みの強い関節に比較的安全に手術を行えるようになったことです。人工関節置換術などの手術法の改良がなされたことも大きいのですが、麻酔方法や管理も大きく進歩し、術後の痛みなども緩和されてきています。しかし、手術のタイミングを逃すと治療が難しくなってきます。
「こつ・かんせつ・リウマチセンター」が皆様のいきいきとした毎日の暮らしに少しでもお役に立てるようにスタッフ一同努力して参ります。どうぞお気軽にご相談下さい。

現在当院で使用できる生物学的製剤

レミケード 静脈注射 8週に1回 2003年承認
エンブレル 皮下注射 1週間に2回 2005年承認
ヒュミラ 皮下注射 2週間に1回 2008年承認
アクテムラ 静脈注射 4週間に1回 2008年承認
オレンシア 静脈注射 4週間に1回 2010年承認
シンポニー 皮下注射 4週間に1回 2011年承認
生物学的製剤とは?

通常の薬剤は化学工場で人工的に合成されて作られます。生物学的製剤は細胞を工場代わりにして生物に薬剤を作らせます。特定の分子に作用して症状を根本的部分から改善します。

【現在当院で使用できる生物学的製剤】

生物学的製剤による骨破壊の抑制

生物学的製剤による骨破壊の抑制

リウマチになった画家ピエール=オーギュスト・ルノワール

リウマチになった画家ピエール=オーギュスト・ルノワール

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